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遺産相続の問題が突然持ち上がった際、法律を良く知らぬまま慌てて動いてしまって不用意なことをしてしまったり、相続人同士がお互いの主張をぶつけ合ったりすると、問題が複雑化してかえって収拾がつかなくなることがあります。
相続の原則は法律で定められているのですが、実務上は原則通りではないことも多々あります。
これらは法律の知識と経験の蓄積がなければ理解することがとても難しい部分です。
法律で決められている遺産分割は、原則的には下記の通りです。
遺言があれば、遺言の通りに相続する
遺言がなければ、法定相続分のとおりに相続する
ここでは、「遺言書が無い」という場合の遺産分割についてご説明いたしますが、困った時は素人判断をせず、当事務所まで早急にご相談下さい。
遺言書作成の重要性に関しての詳しい説明は【遺言書】をご参照下さい。
相続人が誰なのかが確実に分からないと、手続きそのものが出来ません。
「なんとなく知っているから大丈夫」と考えていると、思わぬ自体に陥ってしまうリスクがあります。
想像もしていなかったような人が相続人になることも少なくないのです。
相続財産の名義変更や払い戻しなども、相続人を確定させて他に相続人がいないことを証明しないと実施されません。
法務局だけではなく、金融機関、陸運事務所などでも、相続を原因とする名義変更や払い戻しにはこの証明を求めてきます。
戸籍の収拾と相続関係説明図の作成
相続人調査は、故人が生まれてから亡くなるまでの戸籍を集めるところから始めます。
結婚や転居の度に本籍地を移しているケースも珍しくありませんので、とても困難な作業となることがあります。
戸籍の請求作業を繰り返して必要な戸籍を集めていくわけですが、この作業を完了させるには平均して1ヶ月程度はかかります。
戸籍が揃ったら、故人の記載欄を中心に内容を確認して、最終的に相続人を確定させます。
そして、この戸籍の内容から、相続関係を説明する図面を作成します。
家系図のようなものを想像して頂くと良いと思います。
出来上がった相続関係説明図は、不動産の名義変更(相続登記)の他、郵便貯金の名義変更や払い戻しにも必要となります。
また、様式は異なりますが、法務局に提出する相続関係説明図も必要となります。
遺産を正しく分割するということは、想像以上に複雑で難しいことです。
戸籍を集めて相続関係説明図を終了した段階で、既に故人の財産として何があるのかが把握されていることになります。
相続人の間で相続財産に関する情報を共有できましたら、誰がどの財産を相続するのかということを協議して決定することになります。
「遺言書」が無い場合を想定してお話しておりますので、基本的に各相続人の相続分は民法で定められている法定相続分となります。
しかしながら、法定相続分とはあくまで相続財産全体に対する相続人の権利の限界を定めたものですので、必ずしも法定相続分の通りに分割しなければならないというわけではありません。
これが時として遺産分割協議をとても難しいものにするのです。
極端な話ですと、相続人の間で話し合いがつけば、一人の相続人に全てを相続させても構わないということになりますので、相続人各々が自分の権利を主張し始めて譲らない・・・ということになると、話がなかなかまとまらないというケースに陥ってしまうことになります。
残念ながら相続人の間で協議が成立しない場合は、家庭裁判所に「遺産分割の審判」を申し立てることが出来ます。
まずは「調停」を申し立てて、それが不調に終わった場合には「審判」による分割を行う流れとなります。
各々を「調停分割」「審判分割」と呼びます。
調停分割
家庭裁判所において、「家事裁判官」1名と、「調停委員」2名以上が当事者に加わって協議を行い、分割を成立させる方法です。
内容は相続人全員の合意で成立するものであり、強制されることはありません。
もしここで合意に至らなかった場合、調停不成立ということになり、次の「審判分割」へ進みます。
審判分割
家庭裁判所の判断によって分割方法を定めるように申し立てる方法です。
審判に不服がある場合、当事者は即時抗告することが出来ますが、その場合には高等裁判所の抗告審において、不服申立てに理由があるかどうかが判断されることになります。
この段階まで来てしまうと、いわゆる「泥沼」と呼べる状態と言えます。
相続はいつもプラスの財産ばかりとは限りません。
借金などの負債も引き継ぐことになりますから、調査は慎重に行わなければなりません。
親が誰かの連帯保証人になっていた
親が借金を遺して亡くなった
親族が亡くなったが生前に借金を作っていた可能性がある
そもそも親族と争うのが嫌なので相続を放棄したい
このようなケースに当てはまる方には、「相続放棄」という法的な手段があります。
「相続放棄」とは、文字通りに「相続財産を一切受け取らない」ということです。
注意点としては、「相続放棄」には、相続が開始されてから3ヶ月という申請期限がありますので、出来るだけ迅速に判断をしなければならないところが挙げられます。
遺産分割に関わる他のトピックに関しては
【遺言書】【相続登記】【相続税について】を併せてご参照下さい。
遺産分割協議は、話し合いがもつれてしまってからでは解決に多大なエネルギーと時間がかかることがとても多くなっています。
そうならないために、出来るだけ早く、出来れば相続が発生してからすぐに、当事務所までご相談下さい。